岩場の上で
高橋 友里安子どもの頃、いとこ達と海水浴に行った
そこは少し沖に岩場があり
飛び込み台になっている
いとこ達は大喜びで海へ飛び込んでいく
私は
完全に岩の上で地蔵になってしまった
恐れ…
怖い、怖い、怖い
飛び込んだらおぼれないか
痛くないか
鼻に水が入ったらどうしよう
果てしなく不安材料を頭の中で作り出し
足がすくんで動けなくなってしまった
その横からいとこ達は
何度も何度も飛び込んでゆく
海面から皆が手招きする
結局丸１日岩の上で固まったまま
不安と恐怖と共に過ごし
陽が落ちそうな夕方になって
足から飛び込むことができた
あれ？
こんなことだったの？
一度できたら
二度三度
もう大丈夫
そこで
「もう帰るよ」 の終了合図
日焼けでヒリヒリする背中
勇気を出すまでの長い１日
飛び込めた時のあっけなさ
出来たときの
安堵感や達成感
大人になってからも
勇気が必要なことが
たくさん起きますが
そんな時、岩場の上で固まっていた
自分を思い出すのです
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