季節の音が、あの日を連れてくる

夏の空気が濃くなってきて
遠くから甲子園の応援の音が聞こえてくると
胸の奥がぎゅっと締め付けられることが
あります

夏のある日に
ひとりの少女が
自ら命を絶ちました

救急車の音
テレビから聞こえる甲子園の声援
突き刺すような日射し
風鈴の音

あの日から、家族や周囲にとって
季節の色や音は
ただの風景ではなくなりました

明るいはずの太鼓や声援が
突然、時間を巻き戻すスイッチになってしまう

ふとした瞬間に
あの時の空気、匂い、温度がよみがえる
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周りの世界は動いているのに
自分だけが取り残されているような感覚

誰かと話をしていても
心の奥底にはいつも
あの夏の日が横たわっている

「元気にならなきゃ」と思うほど
心は硬くなり
「泣いてはいけない」と思うほど
涙はあふれてくる

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人は何と言えばいいのかわからず
そっと距離を置いてしまうことがあります

優しさからなのか、怖さからなのか
その距離がさらに孤独を深めてしまうことも

でも、ただ 「覚えているよ」
と伝えてくれる人がいるだけで
その孤独はほんの少しやわらぎます
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急いで痛みを手放さなくていい
元気になろうとしなくていい
思い出す日があっても
それは悪いことじゃない

その人の存在は、確かにここにあった
それを覚えている人がいることは
消えることのない温もりです
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もしあなたの周りにそんな人がいたら

何か特別な言葉を探さなくても
大丈夫です

ただ一緒にコーヒーを飲む
同じ空気を吸う
そっと名前を呼ぶ

それだけですくわれる瞬間があります

季節の音や匂いがあの日を連れてくることは
それだけ深く、その人が生きていた証でもあります

消そうとせず
ただ一緒に抱えながら
生きていけます

投稿者プロフィール

高橋 友里安
高橋 友里安くれたけ心理相談室(庄内支部)心理カウンセラー
幸せの宝探しをお手伝いいたします。そして、ご自身の中に深い深い安堵感が得られるまでサポートいたします。 心理カウンセラー 高橋 友里安

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